2013/05/08

[感想文]青木雄二「ナニワ金融道 ゼニのカラクリがわかるマルクス経済学」


概要 

「ナニワ金融道」著者の故青木雄二によるマルクス経済学の入門書。
ナニワ金融道のエピソードを引いて解説してあるので理解しやすく、解説書としてはなかなか分かりやすい部類ではないだろうか。そして、マルクス思想のダメなところも実に分かりやすかった。

感想

前々からなぜそこまでマルクスに傾倒する人間が多いのかという疑問もあったことなので、ちょうどナニワ金融道を読んだところで読んでみた。

マルクスの資本主義に対する分析については納得しながら読める部分である。

労働者の労働から生み出さされる価値のうち、労働力の再生産に必要となる部分を「必要労働」と呼び、これは賃金として還元される。残りの労働時間は「剰余労働」として資本家の手に渡る。
つまり労働者は資本家によって搾取されている。
労働者は団結し資本家の不当な搾取に抵抗しなければならない。

ここまではいいです。いや、適切な労働分配率ってあるでしょとか、資本家は資本家で市場を研究してどこに投資をするという判断を下すという結構重要な仕事をリスクをとってやってるでしょとか、そもそも設備投資に回ったお金は巡り巡って労働者にも帰ってくるでしょとか、その当たり前のことを搾取とか煽り立てて誰が得するのとか、突っ込みどころは山ほどあるけど、まあいいです。
立場が弱くなりがちな労働者は、資本主義の仕組みを正しく理解し、不当に権利を制限され搾取を受けないように団結して権利を主張しなければいけない、というのは納得できる。

問題はそこからで、なんでそこから資本家を打倒してプロレタリアートが社会をコントロールすることで理想の社会に到達する、という結論に至るのか。この著しい論理の飛躍に、決して頭の悪くない人たちが飛びつく理由がまったく理解できなかったのだが、残念ながらこの本を読んでもまったく分からなかった。

そもそも資本家と労働者の違いとは、資本を自らの意思でコントロールできる立場にいるかいないかの違いしかないのだから、所有という形であれ共同所有者による合議という形であれ、より資本の運用についての主導権を持った人間が資本家に成り代わるだけではないのか、と前から思っているが、その疑問に答える内容はなかった。

マルクスの資本主義に対する批判については、ナニワ金融道という名作のエピソードを例にとって身近に置き換えやすい形で紹介されており、傾聴に値する内容であると思う。
一方で、誰もが持つ自分の現状に対する不満を社会の責任に転嫁し、対立と自己正当化を煽る悪質さについては無自覚かつ無批判なので、あまり他人に勧める気にはならない本である。

ナニワ金融道の書評はこちら→[感想文]青木雄二「ナニワ金融道」



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